催眠のテクニックを恋愛に応用した実践マニュアル

大切な存在になるためのアンカーリング(イカリを打つ)

2010年、年頭のテレビCMです。某食品会社の焼きそばを宣伝する映像で、「2000年!」という成句を何回も挿入していました。

 

このCMは、心理誘導の仕方が実に優れています。

 

今年が2010年なのに、「2000年」と強い成句です。

 

視聴者の頭の中には、たぶん「2010なのに……」といった成句が思い浮かぶはずです。

 

そして、また焼きそばを鉄板の上で焼いている映像で、「2000年!」です。

 

またしても視聴者の頭の中には「10年だよ……」の一言が思い浮かぶはずです。

 

いくらもしないうちに大部分の視聴者がこのCMの意味に気がつきます。

 

「なぜ2010年なのに2000年なんだろう?……10年……10…あっ、そうか、鉄板の上で焼きそばを焼くとジューという音がする。10の部分だけ表に出さないで、鉄板の上で焼いている音にしているのだ!」

 

文章表現だと理解に時間がかかりますが、CMだと言葉と音のタイミングによって視聴者が最短で理解できるようになっています。

 

このCMの狙いは、時間がかかっても視聴者自ら考え気づかせることにあります。

 

繰り返しますが、他人からの伝達ではなく、「自分の意思で潜在意識に働きかけたことは残像として脳裏に定着します」。そして、このCMを視た人は、しばらくの間「2010年」という成句を耳にするたびに、この焼きそばを思い出します。

 

2010年と自社の焼きそばを関係ずけたみごとな心理誘導です。

 

このように、刺激を与えることにより、無関係のものを思い出させる心理誘導を、イカリを打つという意味で『アンカーリング』と言います。

 

催眠療法士は、催眠をかける直前に、クライアントの両肩に触れて誘導を開始するようなアンカーを毎回繰り返します。

 

そうするとクライアントは、催眠療法士が両手で肩に触れただけで催眠に入ります。

 

このようなアンカーリングという手法は多くの催眠療法士が、導入までの時間短縮のために使っています。

 

アンカーリングで重要なのは、「繰り返し」です。

 

長期契約しているクラウアントは、カウンセリング室の雰囲気、匂い、催眠療法士の声などに条件が付けられ、カウンセリング室に入室するとすぐに催眠に入るための心の準備ができます。

 

そこでクライアントの肩に触れるなどの刺激を与える、すなわちアンカーを引き出すと、すぐに催眠状態に入ります。

 

ただし、誤解を招かないように少し補足します。

 

催眠療法士が打ったアンカーは、長くは残りません。

 

この程度のアンカーは、催眠療法を中止したら、おおむね3週間で消えます。

 

ところが、この「アンカーが強い感情と結びつくと、長期間消えることはありません」。

 

世間でよく言われるトラウマ(過去に受けた心の傷)です。

 

心の病とまではいきませんが、日常よくありえることです。

 

次の事例は、20代の男性の話です。

 

ある男性が20代の頃、瀬戸内海へ一人旅にでかけました。

 

乗船したフェリーが、荒波のため船酔いしました。

 

さらに運が悪く隣の女性が香りの強い香水をつけていました。

 

女性には人気のある香水ですが、男性はその匂いのために気分が悪くなりました。

 

「アンカーがかかったときの気分というのは、そのときの条件付けを強め、長期記憶として脳裏に残ります」

 

そこで、この心理現象を他の生活場面に応用することを考えました。

 

たとえば、職場に周囲に好印象を与える男性がいました。

 

休憩時間近くに、そっと男性の腕とかに触れて、「お茶はいかがですか?」などの一言でアンカーを打ちます。

 

お菓子を持参し、「ひと息入れてください」などと言って、肩を軽く叩いてもいいでしょう。

 

「身体に触れた場所と、休憩時間の空間にアンカーを打つ」というわけです。

 

このような行為の繰り返しが、男性の心にやすらぎを与えます。

 

こういった女性の優しい行為を男性は喜びます。

 

やすらぎを与える空間を結びつけるアンカーを数回打つと、やがてその女性が近くに来るだけで、男性はなぜかほっとします。

 

「何回も同じことを繰り返すという行為は、男性の無意識を刺激し、条件反射を般化(はんか)」させます。

 

このアンカーが習慣化すると、男性は女性を一見しただけで心がやすらぎ、女性は男性に安心感を与えます。

 

そして、男性は女性を特別な存在として意識し始めます。